ここでは、林光洋ゼミが忙しいと言われる所以の一つ、「海外実態調査(現地調査)」の説明をします。
What’s “現地調査”?
海外実態調査は言葉のとおり、普段学んでいる国際協力の現場に行き、現場を見たり、声を聴いたり、 においや雰囲気を感じたりしながら調査をすることです。普段は教室で本を読みまわし(輪読)ていますが、 現場で自らが実体験することによって、開発学へのモチベーションが高まったり、 現場で働くことの大変さや不便さが感じられたり、本には書いてないことを発見できたりします。
開発の基礎を学んだあとの「3年次」の夏に行うのが一般的です。4年次は就職活動などもあるため、実質ゼミとしての調査活動は困難でしょう。
どんなことをする?
一言で言うと、「すべて」です。
行く場所(国、地域)を選定する。
→研究する内容にも関わりますが、まずどこの国(国際協力の研究ですから、大抵は途上国) のどの地域に行くのかを決定します。選定する際の要素はその他に、「治安」「宿泊・交通環境」「調査対象機関・団体」 「現地の文化」などです。このような事情を勘案すると、必然的に各国の首都圏を選定する場合が多いのが現状です。
研究する内容を決定する。
→研究する内容は特に規定はありません。教育、保健、ジェンダー、地場経済など、メンバーの興味に応じて自由に選定できます。 しかし、現地調査は、研究をもとに論文を執筆するために行いますから、学生が踏み込める範囲内でのテーマを設定すること、 調査期間中(2週間程度)で一定の結論を導き出せるような仮説を立てることが求められます。
アポイントメントを取る。
→調べたいことが決定したら、関連団体・機関・企業を書籍やウェブサイト、各種イベントなどから探し、コンタクトを取ります。 その際、研究の内容を簡潔に、そして具体的に示した「研究計画書」を作成したり、無礼の無いよう迅速な応答を心がけます。 相手はプロであり、仕事の合間に対応してくださるので、私たちの目線で「学生だから」は通用しません。
現地への渡航手段、現地での交通手段、宿泊先を確保する。
→アポイント(見学先やインタビュー先)が確保できたら、航空券を手配したり、現地で利便の良い宿泊先、各訪問先への交通手段や、 場合によっては通訳を依頼するなども、学生が主体的に行います。
論文執筆のための情報を集める。
→現場では、あらかじめ用意しておいた「質問表」などに基づき相手に質問したり、様子をレポートにまとめます。 帰国後に、それらの資料をもとに結論を導き出し、英語での論文を執筆します。 執筆後、多方面の関係者へのお礼と、完成した論文の送付を忘れずに。
言葉で書いてしまえば、このような流れです。
何が大変?
たくさんありますが、「主体的に動く」ことだと思います。
調査に当たって、林先生からは、具体的な指示はありません。もちろん、研究の枠組みや方向性は示されますし、研究を成功させるための助言や一定の制約はあります。
いわゆる先生の伝で現地を訪ねる「ツアー」ではなく、私たちは自分たちで訪問先を見つけ、研究分野を掘り下げなければなりません。
4年生の先輩方に訊いたり、卒業生の残した資料、計画書の作り方、反省文書などをもとに、自分たちの研究をつくらなければなりません。
また、グループの活動になりますから、週1回のゼミの時間だけ集中すればよいということはありません。 約半年間にわたって、常に上記のような作業に追われながら、研究分野の知識を深める必要があります。
帰国後
長くつらい準備、緊張する施設訪問を終え、日本へ帰国したときの達成感は計り知れないでしょう。
しかし、帰国して一息つくと、すぐに論文執筆を始めます。調査前に、途中まで作成しておいた文章に加え、現地で得られた情報をもとに 研究の結論部分を執筆しなければなりません。集団論文のため、論文の方向性を再度議論し直すことも必要でしょう。また、最終的に執筆するのは「英字による論文」です。英語が苦手な人であっても、自分で文章を作らなければならないのでとても大変な作業になりますし、 3年次後期からは、多くの学生が就職活動も開始するため、忙しい日々はまだまだ続きます。
自分たちが現場で得てきた情報で執筆する論文は、他の誰の研究でもなく、オリジナルのものになります。せっかくの調査を無駄にしないためにも、最後まで気を抜けません。 調査中は仲間と論争したり、冗談抜きに泣いたりします。学生の限界を感じてとにかく悩むこともあるでしょう。
共に調査を乗り越えれば、きっと、一生の仲間になると思います。